正常ですで終わらせない!子どものヘルス・スーパービジョン
【推薦のことば】
子どもの育ちを総合的に評価する指標であるThe Child Development Indexによると、上位を占める西ヨーロッパ諸国を押さえわが国が世界一と評価されている。医療の質、均てん、費用の点でも、わが国の子どもの疾病への対応は極めて高く評価されている。さらに、わが国では乳幼児健診や学校健診が実施され、子どもの保健にも配慮されている。その結果として、身体の異常や隠れた疾病の評価の点で優れた成果をあげている。しかしながら、わが国では家庭、学校、地域での子どもの「生活」、「社会性」、「こころの問題」などへの評価や支援という視点が乏しい。わが国の子どもをbiopsychosocialに評価し、必要な支援をとることのできる体制を構築することが、今後の大きな課題である。
子どもをbiopsychosocialに捉え、支援するために米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)が作成した“Bright Futures”の概念をわが国に紹介し、わが国の小児科医にも取り入れてもらいたい健診の方向性が本書で示されている。診療報酬面での支援がないわが国において本書が示す子どもの健診の具体的事項をすべて導入することは難しいが、Health Supervisionなくしては今後のわが国の子どものこころと体の健康を守り増進することはできないであろう。小児保健・医療に関係する多くの方々に本書をご一読いただき、今後のわが国の子どもの健診のあり方について考えていただきたい。
平成29年4月
国立成育医療研究センター理事長
五十嵐 隆